東京地方裁判所 昭和52年(特わ)2364号 判決 1978年3月10日
本店所在地
東京都江戸川区松江一丁目二〇番二号
興新化学株式会社
(右代表者代表取締役 鈴木弘晃)
本籍及び住居
東京都新宿区坂町九番地一一
会社役員
鈴木弘晃
昭和二年三月一七日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人興新化学株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人鈴木弘晃を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人鈴木弘晃に対し、この裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人興新化学株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、油脂石油及び化学製品の製造加工並びに販売等を目的とする資本金六〇〇万円の株式会社であり、被告人鈴木弘晃(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を総括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空仕入を計上して簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四八年八月二一日から同四九年八月二〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八四六七万一八六四円あつた(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年一〇月二一日、東京都江戸川区平井一丁目一六番一一号所在の所轄江戸川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六二九〇万六八五六円でこれに対する法人税額が二三〇八万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第二八九号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額七一五一万七九〇〇円(税額の算定は別紙(二)の計算書参照)と右申告税額との差額四八四三万二八〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
第一判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書二通(乙1、2)及び検察官に対する供述調書(乙3)
一 中山一雄の検察官に対する供述調書(甲一12)
一 登記官作成の登記簿謄本(甲一1)
第二 別紙(一)の修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) <1>製品総売上につき、
一 中山一雄作成の「売上繰延金額について」と題する答申書(甲一2)
(ロ) <2>期首製品棚卸高、<4>期首仕掛品棚卸高、<8>期末製品棚卸高、<9>期末原材料棚卸高、及び<10>期末仕掛品棚卸高につき、
一 大蔵事務官作成のたな卸除外額調査書(甲一3)
一 伊藤英信作成の「昭和49年8月期公表たな卸金額について」と題する答申書(甲一7)
(ハ) <5>原材料仕入高につき、
一 大蔵事務官作成の架空仕入等調査書(甲一4)
(ニ) <6>労務費につき、
一 大蔵事務官作成の架空労務費等調査書(甲一5)
一 同簿外経費調査書(甲一6)
(ホ) <20>交際接待費、<30>利息割引料につき、
一 前掲甲一6に同じ
(ヘ) <29>受取利息につき、
一 大蔵事務官作成の預金残高および受取利息調査書(甲一8)
(ト) <36>価額変動準備金繰入損につき、
一 江戸川税務署長作成の証明書(甲一9)
(チ) <41>受取配当金益金不算入額につき、
一 大蔵事務官作成の受取配当等の益金不算入額の計算書(甲一10)
(リ) <44>交際費損金不算入額につき、
一 大蔵事務官作成の交際費損金不算入額計算書(甲一11)
第三 別紙(一)の修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる被告会社の昭和四九年八月期法人税確定申告書一通(昭和五三年押第二八九号の符号一)
(法令の適用)
法律に照すと、判示行為は、法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、所定金額及び刑期範囲内において被告会社を罰金八〇〇万円に、被告人を懲役一〇月にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一) 修正損益計算書
興新化学株式会社
自 昭和48年8月21日
至 昭和49年8月20日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(二)
税額計算書
興新化学株式会社
昭和48年8月21日 ~昭和49年8月20日事業年度分
<省略>